『Tail Wind (追い風) 241km/h』 ハドソン湾付近 日本時間の2012年9月14日05:08に撮影(JFK空港離陸後約2時間)(成田到着は同日16:55予定)(Note 1) 上の画面は、ニューヨークから成田へ帰国するときにBoeing 747-400型ジェット旅客機(DL173便)が受けたジェットストリームの、追い風の最大値です。(Note 2) ジェットストリームは基本的に西風ですから、ニューヨークから成田への復路は向かい風(Head Wind)を受ける時間が長いです。案の定、この直後に向かい風に転じ、成田までの間の最大値は300km/hでした。時速300kmは、何と秒速83mです・・・その写真はこちら。ジェットストリームやニューヨークについてはこちらをご覧下さい。 写真にマウスカーソルを置くと、飛行機の位置と方向を示す地図に入れ替わります。 ニューヨークから成田空港へ向けてのフライトに於ける追い風の最大値を、ここで記録しました。(Note 2) 機首の向きが進行方向とずれているのは、追い風を真後ろではない方向から受けているため方向舵で進行方向を修正しているためかもしれません。 JFK空港を離陸してニューヨーク州を北上、五大湖の最下流側に位置するオンタリオ湖上空でカナダのオンタリオ州に入りケベック州を経て再びオンタリオ州からハドソン湾に出る付近です。(Note 3) 氷河期には、ニューヨークを含めて北米大陸の北半分は氷床に覆われていました。ということは、この画面の陸地はほとんど氷の下です。これはローレンタイド氷床と呼ばれ、温暖期(間氷期)に入ってからも5000年前頃まで残っていたそうです。 座席前に設置されたディスプレーは、高度(フィートとメートルが交互)、対地速度(マイルとキロメートルが交互)、外気温度(摂氏と華氏が交互)、向かい風または追い風のスピード(マイルとキロメートルが交互)などの飛行データがリアルタイムで表示されます。現在は、高度9751m、対地速度919km/h、外気温度-44℃、追い風241km/hと表示されています。 高度の単位がメートルでは中途半端な数字ですが、フィートで考えれば自動操縦(オートパイロット)の高度設定値が分かりやすいです。9751メートルは31991フィートですから、飛行機は3万2千フィートを維持しようとしていることが分かります。 風速241km/hを秒速に換算すれば秒速67mです。そんな猛烈な追い風を受けながら飛んでいるにしては対地速度が919km/hと、あまり速まっていないのは、真後ろでない方向から押されて進路を懸命に修正しているためかもしれません。または故意に速度を落としているのかもしれません。成田からNYへの往路では追い風に押されて対地速度が1000km/hを越えることは、しばしばあります。音速が約1225km/hですから1000km/hはマッハ0.82です。 Note 1: 時差ぼけ対策として、帰国する際にはJFK空港で飛行機に搭乗した時点で意識をJST(日本時間)に切り替えています。米国滞在期間が2週間以内なら、その時点で時差ぼけは解消します。 逆に、NYに向かうときは成田空港で飛行機に搭乗した時点で意識をEST(Note 1-1)に切り替えます。しかし、時差ぼけが解消する、すなわち米国の時刻に体が対応できるまでには1週間ほど必要です。 ところで、「ジェット機は速い」です。NYを昼過ぎ((EST 14:10)、日本時間は翌日の早朝(JST 03:10))に離陸すると、飛行機は太陽を懸命に追いかけます。そして、その太陽が沈まないうちに成田へ到着(JST 16:55)します。ESTでは翌日の到着ですが、JSTで考えれば同日到着ですから地球の自転に迫る速さです。(自転速度は赤道上で約1,670km/h、東京のある北緯35度では約1,370km/h、自転軸上では当然ゼロ) 逆に、NYへ向かうときは、成田を夕方(JST 15:10, EST 02:10)に出発すると太陽を背にして地球の裏から先回りしますので夜が短く、すぐに太陽を迎えます。NY到着はEST 14:59で、日付は出発時の日本と同じです。ESTで考えれば同日到着ですから、このことからもジェット機の速さが分かります。 なお、このページのESTとJSTとの関係は、米国が夏時間期間中の値です。(Note 1-1) Note 1-1: ESTやJST、そして時差については『米国の標準時と時差ぼけ』をご参照ください。 Note 2: ジェットストリームは基本的には西風ですが、風向も風速も常に変化していますし、蛇行しています。今回はずっと起きていましたので、たぶんこれがTail Wind(追い風)の最大値です。 Note 3: 成田/NY間の往路と復路の飛行ルートは、かなり離れています。 上の写真とは逆方向となる成田からニューヨークへ向かう便(往路)の場合は、千島列島からかなり遠くの太平洋上を飛行するので千島列島の島々は見えません。飛行ルートは上記(復路)の逆ということではなく、往路のルートは全体的にかなり南側にシフトしており、これは追い風となるジェットストリームを利用するためだそうです。 往路は成田を離陸後、千島列島の南はるか沖からアリューシャン列島を通過するとアンカレッジの南でアラスカ湾に進み、カナダのブリティッシュコロンビア州(Province of British Columbia)上空へ至ります。上の写真、すなわち復路でこれから通過するユーコン準州とノースウエスト準州は、往路のずっと北側に位置しており、その辺りの往路と復路の距離は1000kmほどありそうです。 その後ハドソン湾上空は通らず、ずっと南のスペリオル湖、ヒューロン湖、オンタリオ湖を経てNY州に入ります。それは、往路に撮った写真で確認しました。 さらに、往路と復路のルートの違いだけではなく、往路と復路のそれぞれに於いてもフライトごとにルートが異なることがあるそうで、フライト当日の気象と飛行高度の風向・風速を検討してルートを決めているとのことです。 附記: 飛行機の座席に設置された液晶ディスプレーにフライトインフォメーションを常時表示可能になったのがいつなのか分かりませんが、これを見ていれば長旅に飽きることがありません。別のページで「時差ぼけ対策として飛行中は寝ることに徹している」とか書いておりますが、今回の米国出張でのニューヨーク往復はほとんど寝ないで画面を撮影していました。周囲の人は不審に思ったかもしれませんね。 窓側に座ったとしても飛行中はシェードを閉めるように指示されますので外を眺めていることはできませんが、この画面を見ていれば状況が掴めます。 NYのJFK空港を離陸し、「ここはオンタリオ湖上空だからカナダに入った」、「成田へ向かっているのに追い風ということはジェットストリームが蛇行して西ではなく南から吹いているのかな?」、「この辺は高度が3万フィートに設定されているようだ」、「対地速度が巡航速度より速い946km/hということは追い風のせいだな」、「外気温度-38℃は大して低くない。北極付近ではどうなるかな?」・・・などと、興味津津でした。 そして、ニューヨークへの往路と成田への復路のデータを比較すると、往路と復路が最大1000kmも離れていることが分かったり、ジェットストリームのスピードが300km/m(毎秒83m)にも達することが分かったりと、思いがけない成果です。 結果として、時差ぼけに対しては機内で寝ているか起きているかは決定的な問題ではないようです。 |
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